君に届けるこの想い 「越前、さっきから何を怒っている?」 「…………。」 普段から口数が多いとは言えないリョーマだが、ここまで無口を通すのは珍しかった。 しかもその相手が、部長兼恋人の手塚であったのだから、他の部員は何事かと目を見張る。 「全く…!いい加減にしろっ、もう知らんぞ。」 痺れを切らした手塚は、リョーマに背を向けて歩き出す。 だから気付けなかった。 こっそりとリョーマが涙を流していた事に………。 「う〜ん、朝練からだったけど、本当に今回はスゴイな。」 どこか感心したような口調の乾に、不二は楽しそうに微笑む。 「そうだね。今なら僕にもチャンスがあるかも♪」 この不二周助という男は決して冗談を言わないから恐ろしい…と乾は思った。 きっと今のも、心からの素直な言葉であるのだろう。 「ね、ねv今日はおチビ、スッゴク機嫌悪いよん♪」 乾と不二の所に戻ってきた菊丸は、嬉々として話す。 「今回は何をやってくれたのかな?」 不二も楽しそうに訊く。 「俺が抱きついたらさ、『英二先輩…、寒いからもっと抱きしめてv』ってさ〜vv」 事実は少し違う。 リョーマが言った台詞は、『英二先輩、抱きしめていいですよ。』だった。 「成る程、相当手塚が怒らせる事をしたんだろうな。」 乾の言葉に、不二と菊丸も頷く。 そう、リョーマは手塚と喧嘩すると、他の部員に甘えてくるのだった。 現に今も、大石の腰に腕を回して離れないでいた。 「さて…、そろそろ手塚に事情を訊いてくるか。」 ニコッと、一見、優しそうに見える微笑みを浮かべる不二。 「え〜?もう??折角、おチビが可愛いのに〜…。」 「あの状態じゃ、ツマラナイよ。いつものリョーマ君が好きだしね、僕はv」 ま、そりゃそうだけど〜…と不満を漏らしつつも、不二と共に<原因>のもとに行く菊丸。 興味本位でついて行く乾。 「……て感じなんだけど、何をやったらあそこまでリョーマ君の機嫌を損ねられるの?」 ニコニコと、毒のある台詞を吐く不二。 「…知らん。朝から機嫌が悪かったんだ。俺の所為ではない。」 いつも以上にムスッとした表情の手塚に、3人は苦笑する。 「ふ〜ん、でもアレは絶対手塚の所為だと思うにゃ〜。…もしかして、おチビの誕生日を忘れてた…とか。」 菊丸自身、冗談で言った台詞だった。 「…?リョーマの誕生日、か…?」 その釈然としない台詞に、手塚以外の3人は驚きを隠せなかった。 「おいおい、手塚。本気で言っているのか?」 「まさか、だよね?いくら手塚でも…」 「今日がおチビの誕生日だって、知ってるよにゃ?」 それぞれの言葉を聞いた手塚は、しまった!という顔をした。 「そうか…、だから朝からあんなに機嫌が悪かったのか……。」 「手塚、早く謝ってきなよ。」 「うにゃ、許してもらえなくなっちゃうよん♪」 「許してもらえる確立38%だな。」 「…すまないな、皆。」 リョーマのもとへ走る手塚を見送った3人が、内心「別れないかなぁ…」などと思っていたかどうかは謎である。 「越前、話があるのだが……」 「…もう知らないんじゃなかったっけ?」 冷たく言い放つリョーマに、手塚は心が苦しくなるのだった。 「お前、今日が誕生日だったのか?」 「……まぁね。誰かさんは覚えてなかったみたいだけどね。」 「それは…すまない。悪かった…。」 「…別にいいよ。アンタにとって、俺がどの程度の存在なのか確認出来たし…。」 心を閉じているリョーマに、自業自得ながら、唇を噛み締めるしかなかった。 「勘違いするなっ!そんな風には思っていない!」 「?!……でも、忘れてたのは事実でしょ。」 「それは認める…。だが、誕生日プレゼントとして、一言告げよう。」 「何?」 「…心の底から、リョーマの事を愛している…。誕生日、おめでとう。」 それを聞いたリョーマは、顔が紅潮するのが解った。 逃げるように手塚の前から走り去ると、ふぅ…と溜め息を吐きながら壁にもたれかかる。 「参ったなぁ…、誕生日プレゼント、願った通りだなんて……。」 くすっと苦笑すると、きっとリョーマが居なくなった事で困っているであろう、手塚のもとに戻ろうと歩き出す。 (俺が欲しかったモノが、『国光の気持ち』だなんて…知ったらどう思うかな?) いつの間にか心は晴れ、機嫌も良くなっていて… しかしそんな変化に、手塚どころかリョーマ自身も、未だ気がつかないのだった。 リョーマ誕生日記念小説vvv こちらも本当はイラストにするはずでした; なんだかなぁ…最近スランプかも。 駄文がさらに退化したって感じかな…。 困ったなぁ;書かなきゃいけないもの、たくさんあるのにぃ! 兎に角、誕生日に間に合って良かったv リョーマ君!お誕生日おめでとう! |